札幌地方裁判所 昭和48年(ワ)525号 判決
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【判旨】
一<証拠>を総合すると、従業員組合は昭和三六年四月北洋相互銀行従業員をもつて結成された労働組合であり同四六年四月二〇日に法人格を取得したこと、昭和四六年五月二一日には従業員組合から相当員数の組合員が脱退して同日原告組合を結成したこと、右脱退があつて後の従業員組合即ち被告組合は従来からの組合規約に基づいて活動を行なつたこと、および右脱退によつては登記簿の記載事項や上部の労働団体への加盟体制等に何らの変動を及ぼし得なかつたことが各認定でき<証拠判断略>、また当事者間に争いのない請求原因第四項1の事実によれば原告組合結成時における原告組合員は二三三名であるのに対し被告組合員は一八七〇名にものぼることをも考慮すれば、結局、請求原因第一項記載の従業員組合が昭和四六年五月二一日消滅したとの主張は到底認めるのが困難というべきである。換言すると、本件は原告が主張する意味での組合分裂の事案ではないのである。
二しかし、労働組合内に相拮抗する複数の集団が発生し、その対立抗争のため組合が統一的組織体として存続することが極めて高度かつ永続的に困難となり、その結果組合員が集団的に離脱して新組合が結成されるという事態が生じた場合には、単なる組合員の集団脱退とは区別し、新組合からする組合財産分割請求を認める余地が残ると解される(最高裁判所昭和四四年(オ)第四三八号事件に対する最高裁判所昭和四九年九月三〇日第一小法廷判決参照)。とはいえ、組合員はまず組合が統一的組織体として機能を保持する様に組合内部において最大限の努力を尽くすべきが当然であつて、尽くすべきを尽くさずして脱退した者に対し、(それがいかに多数人であるとしても)組合財産分割を認める特別の法理を導入する必要はいささかも存しないと言わねばならない。
原告は請求原因第二項において、組合の方針を批判する者には懲戒処分をもつて応じ、また組合役員選挙においては選挙活動を妨害する等、組合内部における民主々義のルールが無視されていたから集団脱退も巳むを得ないものであつた旨主張する。しかし、その主張事実が認められるにしても妨害の行なわれた選挙は昭和四五年度に関する一回にすぎず、また<証拠>によればいわゆる批判グループは選挙活動に対する妨害事実につき選挙管理委員会ないし選挙管理委員に対し何らの申入れを為してないことが認められ<証拠判断略>、また全証拠によるも懲戒処分の是非や右選挙活動に対する妨害について、組合大会で討議する様に要求したり、一般組合員に対して右討議を行なう様理解を求めた、という形跡もない。しかも同証言によれば、組合の方針や体質改善に関する批判グループの意見は文書にして有志に配る等したもののそのための臨時大会招集を要求することもなかつたこと、また同グループは右要求をして意見を述べても当時組合員の七五パーセントの組合員が当時の方針を支持して団結していた状況からみて右の改善は不可能であつたこと、昭和四六年春闘を妥結するについては従業員組合内に混乱がなかつたこと、右春闘時においてすでに批判グループは新組合結成を決意しており、多くの組合員の支持を得るため右春闘の闘争方針がより激しいものになることを望んでいたこと、および右期待に反して春闘は妥結したため批判グループは執行部に対し、過去の指導方針の誤りを認め全相銀連から脱退し組合費を値下げせよ等六項目にわたる要求を示し新組合結成の時期を見計らつていたこと等の各事実も認められるのであつて、これら事実によると、批判グループは昭和四六年初めの時点から、従業員組合が統一的組織体として機能することに満足せず、かえつてこれを阻止しようとしていたと言うべきである<証拠判断略>。そうすると、原告組合を結成した脱退組合員は、組合内部において最大限の努力を尽くさなかつたものといわざるを得ない。
以上によればその余の諸点につき検討するまでもなく、原告組合について組合分裂なる特別な法理を適用する必要がないと認むべく、また右事情にてらしそのことが不公平な結果を招くというものでもないのである。
(丹宗朝子 前川豪志 上原裕之)